成蹊大学新聞会ブログ

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編集局出張通信「原発災害、東電社長が地元自治体を訪問」

○「東電社長、地元町長らと面会」

5月4日、東京電力の清水社長が、福島第一原子力発電所より30キロ圏内にある浪江町葛尾村広野町の各町村長と面会。また、浪江町の住民が避難している体育館を訪れ、直接住民に対し謝罪した。

清水社長は午前中、いわき市湯本町にある、広野町災害対策本部の置かれた民間企業の社屋を訪問。対策本部に詰めている町職員に対し、原発事故について謝罪の言葉を述べると、別室で山田基星広野町長と面会し、深々と頭を下げた。

 

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 (謝罪する東電・清水社長)

 

清水社長と山田町長の会見は20分ほど。会見終了後清水社長は足早に対策本部を後にし、次の訪問先へと向かった。 

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山田町長は記者団に、東電側に対し一日も早い事態終息を改めて要請したところ、東電側からは、住民が一日でも早く故郷に戻れるよう全力を尽くすとの返答があったと述べた。

また、原発事故後一ヶ月半が経過したこの時期に初めて訪問を受け入れた事について、山田町長は、住民への行政サービスを優先し、無用な混乱や不安を避けるためだったと説明。一方で、原発事故への国の対応の遅れについて不満をあらわにした。   

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 (記者団の質問に答える山田基星・広野町長)

 

○「先行き見えぬ、不安」

 

清水社長が今後、広野町民に対し直接謝罪や説明をする可能性はあるのか。本紙記者の質問に対し山田町長は、今は全力を尽くしてもらうほか無い、と答えた上で、謝罪や説明を何度求めたところで、同じようなものになってしまうだろう、と苦しい胸の内を明かした。

 

原発被災住民ができることは、ただ祈ることだけだ。どれほど総理や社長が頭を下げようと、どれほどの謝罪や説明がなされようとも、それで事態終息が早まるわけではない。それがよく分かっているからこそ、やり場のない憤りが募る。

 

今や避難範囲は当初の10キロから20キロへと拡大し、さらに20キロ圏外の一部地域の避難も始まった。またこの数日で、福島第一原発1号炉が震災初期の段階でメルトダウン炉心溶融)を起こし、圧力容器も損傷している事実が公表された。さらに同原発の2・3号炉についても、同様の事態が予想されるという。

 

不安定な温度や、原子炉への注水量と水位が当初から見合わなかったことなど、燃料棒損傷・容器破損ついて、東電も政府も早くからその可能性に気付いていただろう。だが計器類の多くが故障し、「動かぬ証拠」が無かった事で、公表がここまで遅れたのだろう。しかし結果的にそれが情報の隠蔽と見なされ、被災住民をさらに苦しめることとなった。

 

今現在も汚染物質をはき出し続けている第一原発。故郷を追われた人々が再び我が家に帰るためには、汚染源を断ち、徹底した環境調査と汚染除去を実施しなければならない。それが果たしていつになるのか。
先行きが全く見えぬ中、不安な日々だけが過ぎていく。