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編集局出張通信「警戒区域、一時帰宅の準備会場」

福島県双葉郡広野町の公民館は、原発警戒区域内から家財・車を持ち出す際の拠点となっている。午後4時過ぎ、マイクロバスが次々と到着し、一時帰宅した住民達が降りてくる。この日(29日)は楢葉町の住民192世帯、330人あまりが一時帰宅。車の持ち出しはなく、家財の持ち出しのみだった。 

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(一時帰宅者らを乗せたバス) 

○公民館に隣接する町営体育館は、出発前の準備会場となっている。住民らは受付をすませると、ここで帰宅に際しての注意事項の説明を受け、防護服などが支給される。その後は民間のバスに分乗し、故郷へと戻る。
公民館前の駐車場には白い大型テントが仮設されている。こちらでは一時帰宅を終えた住民や、持ち帰った家財の放射線量測定を行っている。仮に基準値以上の汚染が確認されれば、併設された自衛隊の除染施設で除染作業を行う。これまでのところ、基準値を超える汚染は無いという。なお使用済み防護服などはここで回収され、東電が処分している。

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放射線量測定(サーベイ)テント)

 

原発被災地でも30度に迫る蒸し暑い日が続いている。そのため、これまで義務づけられてきた防護服着用にも変化が起きた。一時帰宅は平均して4~5時間であり、その間は防護服を脱ぐことは出来ない。しかし24日には一時帰宅者から熱中症患者が出るなど、防護服着用時の健康管理が懸念されていた。

そのため国は先日、一時帰宅の際の防護服着用義務を緩和、帽子やマスク着用だけを求めることとした。一時帰宅した住民に付着した放射性物質が、これまでのところ懸念されるほどの量ではないうえ、現地での活動時間も数時間と短いためだ。

着用義務の見直し以降、一時帰宅者のおよそ6割が、防護服を着用しないか、一部分のみ着用している状況だという。

一時帰宅者には高齢者も多い。本紙記者も防護服を一着所持しているが、夏場に高齢者が防護服を着用したまま活動することがどれほど厳しいか、容易に想像できる。

もっとも防護服着用義務の見直しが、そのまま警戒区域の安全性証明にはならない。そもそも防護服は、あくまで粉塵化した放射性物質の付着や吸引を防ぐ物であり、放射線自体を防ぐことはできない。そして残念ながら、警戒区域内の放射線量は依然高い水準のまま。完全帰宅とはほど遠い状況だ。

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(除染施設。「幸いにして一度も使っていない」と現場責任者は話す)