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編集局出張通信「原発事故とペット」

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写真は東京電力福島第一原子力発電所より南10キロの、同第二原子力発電所で保護された犬。犬種はゴールデン・レトリバーと見られる。
原子力災害による20キロの警戒区域内では、狂犬病予防接種の登録だけで5800匹の犬がいた。無登録・未登録や、猫を含めればさらに多くのペットがいたことになる。残念ながら多くのペットたちが、住民避難の際に取り残されたままとなった。

震災から3ヶ月。警戒区域内では現在も残されたペットの多数が生存していると見られているが、時間の経過と共に状況は厳しさを増している。ペットたちの衰弱も激しく、餓死や共食いによる亡骸も見受けられるという。
行政による保護活動が十分行われない中、NGOを中心に民間団体が独自に保護活動を進め、これまでに一定の成果を収めた。しかし警戒区域設定に伴い、部外者の立ち入り規制が行われたため、活動に制約が生じている。

 

もっとも警戒区域設定の背景には、現地において火事場泥棒が横行している事情もある。警察も全国から応援を得てパトロールを強化しているが、まだ十分とは言えないようだ。

今後原発事故被災者の避難生活が落ち着いてくれば、ペットの引き取りや保護要請もさらに増えてくると考えられる。現在は各団体が独自にペットの保護を進めているが、今後は保護されたペットのデータベースなど、統一された情報伝達・発信の場が必要となってくるだろう。

 

なお冒頭に紹介したレトリバーは、5月中旬、野犬化した犬たちに混じって第二原発の構内に迷い込んできた際、職員にじゃれついて離れなかったため、そのまま保護された。
毛の一部が抜け落ち、後ろ足に裂傷があったほか、シッポも短くちぎれていた。生まれつきなのかどうかは不明だが、傷を負っていることから、他の犬に襲われたと見られる。

現在は原発職員が交代で世話を行っており、体力も大分回復しているという。

なお保健所への連絡は既に行われており、近日中に原発事故対応の後方拠点となっている複合運動施設「Jヴィレッジ」に移送される予定。移送後は保健所が約一年間、保護することとなっており、その間に元の飼い主を見つける。

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