成蹊大学新聞会ブログ

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欅祭、1日目。雨にけだるさを覚えながら何か面白い展示はないかと3号館内をくるくる回っていると1つの立て看板が目に付いた。

真っ黒に塗られた背景に赤いソファー。ソファーの上に横たわっているライオンが立派に描かれていた。迫力のある絵だなぁと感心し近づいてみると「休憩所」の文字。どうやら文芸部が開いている休憩所の看板だったようだ。そこで疑問が生まれる。「文芸部なのにライオン?しかも、休憩所?」。頭の中が?でいっぱいになったために、入口付近にいた制作者の方に話を聞いてみることにした。彼女の力作だったようで快く看板への情熱を話してくれた。「(今年の部員たちによる書評は)賞を取った作品がテーマなので、賞を取るってことは弱肉強食の世界。だからライオンかなって」文芸部員の口から「弱肉強食」という言葉が出てきたことにぽかんとする私。すると彼女は笑顔で続けた。「あ。ライオンですらくつろいでしまうゆったりした空間って意味も込めています!」

 文芸部への印象がだいぶ変わったところで、看板のライオンにあいさつを済ませ、1歩中に入る。すると本好きにはたまらない空間が広がっていた。隅には本棚があり、壁には様々な本の表紙が無造作に貼られている。見覚えのある淡いパステルカラーの表紙…森絵都の本。 この表紙を見た時、私の心がぽっと温まるのを感じた。森絵都は私が小学生の頃に夢中になって読んだ作家だ。当時は、まだ文庫本が少なくハードカバーの本を母親におねだりをして買ってもらった。そんな思い出が一気に色味を帯びて蘇ってきたのだ。

 

近頃は、課題の本やベストセラーで話題に上っている本など、義務に近い感覚で本を読むことが多かったように思う。読みたい!という純粋で忘れていた感覚、それを思い起こさせてくれた空間と出会わせてくれた文芸部に感謝したい。そしてもちろん、きっかけとなったあのライオンにも。